新酒の初絞り始まる
南外村「出羽鶴酒造」=25日から全国発売へ(11月17日・水)
山が雪で白くなる季節を迎えた。雪を迎えるシーズンとなって南外村の「出羽鶴酒造株式会社(伊藤辰郎社長)」でも酒造りが始まった。17日朝には、新酒の「初絞り」も行われた。コメのかすが混じってまだ乳白色に濁った原酒を袋に詰め、槽(ふね)と呼ばれる金属製の巨大な升(ます)に積み重ねるもので、酒が酒の重みで絞り出され、チョロチョロと小声で鳴くような音で流れ出てくる。冷えきった絞り場。酒が生まれた瞬間はどこか神秘的だ。流れ出た酒を茶わんで受けてひと口、グイッと試飲した製造部長の佐渡高智さん(42)は「11月に入っても外気が下がらず苦労したが、酒の味はピリッとした切れのいいものとなった」とホッとした表情を見せた。初絞りの酒は純米酒として25日から「出羽鶴新米初しぼり」の名で同社の販売ルートに乗って全国販売される。そして蔵ではこれから来年3月いっぱいかけて次々と酒が仕込まれる。
酒造りの責任者である杜氏の佐藤賢孔さん(54)をはじめ酒蔵で働く人々は「頭(かしら)」、「麹(こうじ)師」、「かま屋」、「精米長」など独特の名前が付く。蔵人として働くのは全部で12人。10月8日に全員が蔵入りし、酒米「秋の精」2000キロを研ぎ、蒸し作業、こうじ揉み、酒母造りなどの仕込みを行い、容量5000リットルの巨大なタンクでこの日までの24日間、じっくりと発酵させ「醪(もろみ)」を誕生させた。
今年は心配された台風被害もなく、酒造用玄米「秋の精」の作柄は良かった。しかし、例年より外気が高く、蒸した米を仕込むための温度管理に苦労した年でもあった。気温が高い状態で発酵が始まると簡単に酒になってしまい、日本酒独特の味の深みや甘さが消えてしまうからだ。このためタンクの中で酒の発酵が始まると杜氏の佐藤さんらは蔵に泊り込んで、冷却機でタンク内の温度を下げるなど温度管理に万全の注意を払った。
「日本酒独特の甘み、切れ味は寒さの中でゆっくりと仕込むことでから生まれる」と佐藤さん。蔵で働く人たちは「暖房のある部屋なんでとんでもない。寒さが酒のうま味を造るんです」と胸を張る。「ところが11月になってもこの外気。年々、暖かくなっているような気がする。やはり地球温暖化は進んでいるのだろうか」と佐藤さんは心配する。
槽(ふね)からチョロチョロと流れでる酒。製造部長の佐渡さんと交互に試飲した佐藤さんは「ウン。いい味だ」と満足そうにうなずき、「これで今年も始まったな」と酒造りの季節を迎えたことを胸に刻んだ。そして青々としたスギの葉っぱを束ねて作ったバスケットボール大の杉玉を手にハシゴを上った。昨年からつり下げている古い杉玉と交換し、新しい酒が生まれたことを知らせるためだ。杉の葉は昔は酒を入れる桶(おけ)の漏れをふさぐのにも使われ、杉は酒の神さまにとって神聖なものだったという。新しい杉玉がつり下げられたことで雪で冷やされ、雪に育てられる冬の風物詩「酒造り」が本格化する。
「出羽鶴新米初しぼり」は720ミリリットルで1050円(税込み)、1.8リットルで2310円(同)。生酒だけに冷やが一番。正月のめでたい酒として人気がある。