日本画家・荒川青亭生誕110年展
力強い絵筆で描いた郷土の山や川、湖(11月18日・木)
角館町の平福記念美術館で、同町出身の日本画家・荒川青亭の「生誕110年荒川青亭展」が開かれている。荒川青亭は明治27年(1894年)、角館町中町に生まれ、16歳の時、平福穂庵(1844〜1957)門人の西宮禮和(1850〜1920)から絵の手ほどきを受け、22歳の時、日本画家・結城素明(1875〜1957)に師事、その後、平福百穂(1877〜1933)とも親交のあった日光出身の日本画家・小杉放庵(1881〜1964)と出会い、小杉から青亭の号をもらって多くの作品を残して昭和52年(1977)に83歳で亡くなった。
青亭は田沢湖町の駒ヶ岳や抱返り渓谷など、故郷の生活に密着した山や川を数多く描いた。また県展の前身である秋田美術展の創設に参加するなど秋田の芸術を広める活動もした。今回は青亭のご子息・荒川浩和氏(東京在住・元国立博物館漆芸室長)をはじめ、青亭作品を持っている人たちからの協力を得ての開催。
会場には軸装や額装の「摩利支天象」「暮るる深山」「山水図」「田沢湖潟前風景」など見ごたえのある大作から小品45点が展示されている。「午さがり」と題した額装の絵はそりを引いた馬が雪の原っぱで一休みしている光景を描いたもので、力強い馬の躍動感が伝わって来る。軸装の「山水図」は新緑のみずみずしい山を背景に描いた田園風景で、田んぼを耕す農婦の点景など、観ているだけでもため息が出そうな見事さ。
軸装の「如月の夜」は厚い雲を画面いっぱいに描くという思い切った構図で、漆黒の闇からキラリと光る星が宇宙の神秘さを伝える。軸装の「田沢湖潟前風景」は現在の辰子象のある西木村潟前の昭和初期のころの風景を描いたもの。もう姿を消してしまったが、幻のサカナ「クニマス」が採れたころだったろう。湖岸には漁師たちが使った舟も描かれている。「抱返り」もまだトロッコのあった昭和初期の抱返りの冬の風景を墨絵にしたもので、「回顧(みかえり)の滝」を遠景に炭俵を背負った二人が渓谷の道を歩いているのを実写した。
絵を前に足がすくんでしまいそうな迫力を見せるのは軸装の「虎」。力強い両手を前に突き出し、ジッと遠くをにらむ姿は野生というよりも神の領域に生きているような感じさえ受ける。一方で着物の帯に牡丹やダリアを描く繊細さも。パンフレットの表紙に描かれた「古城山」は昨年、角館町の文化財に指定された。荒川青亭は大曲市四ツ屋の高階医院(高階高院長)とも縁(ゆかり)があり、昭和初期、高階家に逗留して多くの作品も残している。
青亭展は今月28日まで。会期中は無休。開館時間は午前9時から午後5時まで。観覧料は大人300円、子ども200円。問い合わせは0187─54─3888。