藤嶋、松田の両氏が届け出
旧千畑町対旧仙南村の対決、カギを握る旧六郷町(11月23日・火)
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町村合併で今月1日に誕生した美郷町初の町長選が23日告示され、午前8時半から六郷庁舎選管で立候補の届け出を受け付けた結果、旧千畑町長の藤嶋長右エ門氏(66)=同町本堂城回・無所属=と旧仙南村長の松田知己氏(41)=同町金沢西根・同=が届け出た。午後5時に届け出が締め切られた結果、この二人による一騎討ちが確定した。
藤嶋陣営では六郷馬町の観光施設「湧太郎」のホールで、午前8時から神事で必勝を祈願。ホール内は約400人の支持者で埋まった。そして駐車場での出陣式が始まると周辺は7〜800人ほどの人数へと膨らんだ。
旧六郷町長だった坂本茂弘氏(67)が「旧町村の地域対立を避けたい」との理由で15日に出馬辞退を表明してから4日後の19日、坂本氏の支援者から推されて立候補を決意した藤嶋氏。急な出馬表明だったが、旗手を失った坂本後援会はその翌日の20日、藤嶋後援会六郷支部へと鞍替えし、その旗を持ち替えた。
出馬するには時間もなく、悩んだ末の決断だったと言うが19日の記者会見では「坂本さんはしこりを残したくないと出馬を辞退したが、ここまで来ると無投票になっても地域対立が解消されるわけでない。むしろ選挙で決着をつけるべきだ」と闘争心をむき出しにした。そして21日、千畑体育館であった決起大会には約1500人の支持者を集める勢いを示した。
出陣式で総括責任者を引き受けた佐々木順吉町議(旧六郷町)は「坂本さんの出馬辞退で大きく落胆した時もあったが、藤嶋立つべしの声が大きな力となって藤嶋さんの出馬を決断させた。藤嶋さんには40年のキャリアがある。町民が今、何を考え求めているか。常に町民の目線に立って仕事をしてきた。出馬を決意した藤嶋さんの心意気に応え、初代の美郷町長に送り出そう」と支持を訴えた。そして山田フーズの山田清繁社長や近藤道哲美郷町商工会副会長が応援のあいさつをした。
最後にマイクを握った藤嶋候補は「29歳の時から議員をやってそろそろ引退の時だなと思っていたが、誰がおれたちの気持ちを受け継いでくれるのかの声に推され、やってみる決意をした。昨日から六郷町を回っているが、家の中からはい出して来たおばあちゃんから『エガッタ。頑張れ』と励ましを受け、やっぱり出て良かったと思っている」とその心境を語った。
そして「町村合併はぜんこ(お金)がなくなったから、その必要に迫られてのものだった。これからは厳しい行政改革をやらないと町が成り立っていかない。将来を背負う子どもたちに苦労を欠けないためにも皆さんから協力してもらわなければならない」と行革の徹底を訴えた。そして雇用の場をとなるよう「湧水とお寺の町の資源を活用した観光産業の開発と地元企業の発展のため手伝うのが行政の役目だ」などと訴えた。
一方の松田陣営では天神堂字赤城の国道13号沿いに選挙事務所を開設した。「みんなでつくろう明るい美郷町」「融和と前進、見据える美郷町の第一歩」の看板を掲げ、クリーンなイメージの浸透に力を入れている。「松田さんの若さに期待したい」と主婦を中心に約700人の支持者が集まった。
後援会の半田秀雄会長は「出馬表明以来、松田さんは多くの人々と話し合ってきた。その成果がここに集まった。5日間を正々堂々と戦っていきたい」と檄を飛ばした。21日に仙南総合体育館リリオスで開いた決起大会には約2300人の支持者が詰めかけるパワーも発揮した。
応援に駆けつけた自民党県連幹事長の北林康司県議(秋田市)と民主党の小田嶋伝一県議(横手市)は「坂本さんの辞退は英断だった。若い松田さんに託したのに」と対立候補をチクリと皮肉った。そして「選挙は水もの。必ず勝利を手にしてほしい」と激励した。21日の決起大会にも参加した渡部英治県議(大曲市)、門脇光浩県議(西木村)も顔を出して見守った。
濃紺のスーツに身を包んだ松田氏はマイクを握って「中央分権推進一括法が制定され、地方自治体は新たな枠組みに取り組んでいる。それが平成の大合併だ」と町村合併の意義を説明。そして「21世紀は心の時代と言われ、社会の安心と安定が求められている。美郷町がどの方向を目指すのか。皆さんと共にその方向を定めなければならない。そのための大切な選挙であり、自分の思い、自分の信条、理想、理念を訴えたい」と訴えた。
さらに「私の思いはただ一つ。地域は住民一人ひとりの心のよりどころになること。それに応えるためにもしっかりとした行政運営が必要だ。美郷町の行く先、行く方向をしっかりと持たなければならない。行政は住民一人ひとりの思いを大切にし、公平な行政でなければならない。一つひとつの課題に誠実に取り組むことが大事だ」と述べた。そして3つの地域間にある壁を取り除くために「融和と前進」をキーワードに▽スポーツ交流やイベントでの地域の融和▽地域間交流による町の活性化▽人づくり▽農業と商業の振興▽福祉の充実▽教育の充実▽生活基盤の整備の7つを公約として掲げたと訴えた。加えて「定住人口が増えなくても、交流人口の増加を目指したい。そのためにも秋田国体を町民総参加の国体とし、町の活性化に結びつけたい」と支持を求めた。
最後には「美郷町を一体感のある町にしたい。『松田に町政を任せる』と言われるよう町民一人ひとりに訴えていく」と説得するように訴えた。
投票は28日午前7時から午後6時まで町内25カ所の投票所で行われ、午後7時半から六郷字作山の町総合体育館アスパルで即日開票される。大勢が判明するのは午後9時ごろの予定。22日現在の有権者数は男9181人、女1万444人の合わせて1万9625人。旧町村ごとに見ると旧千畑町は6964人、旧六郷町5861人、旧仙南村6800人となっている。
今度の選挙戦、坂本氏と松田氏の戦いの場合、勝敗のカギを握っていたのは旧千畑町だったが、急きょ舞台が転向し、藤嶋氏と松田氏との戦いとなった。これまでは旧千畑町を主戦場とにらんでいた松田陣営は作戦を全面的に練り直しを迫られ、一方の藤嶋氏は地元・千畑地区での知名度を生かし、さらに六郷町では坂本氏の支持者をいかに結びつけるかにかかっている。坂本氏が下りたことへの同情と藤嶋氏がそれに成り代わっての出馬に期待をかける声。一方、若さと清新さ、行動力で地元・仙南をまとめ、千畑地区と六郷地区では女性浮動票への浸透を図りたい松田氏。選挙前半の情勢は混沌としている。
藤嶋長右エ門氏=大曲農業高校卒。1968年3月から1990年7月まで旧千畑町議6期22年4カ月務める。98年1月まで町助役。同年4月の町長選で一騎討ちを制し、初当選。2期目は無投票で再選され、11月1日の合併で失職。その後、19日まで美郷町長職務執行者を務めた。1938年4月17日生まれ。自宅は美郷町本堂城回字馬場4番地。
松田知己氏=横手高校を経て東北大学農学部卒。県庁入りし、秋田農業改良普及所、農政部農政課、農業技術開発課に在職。1996年9月、県農業試験場主任で退職し、同10月、仙南村助役に就任。2000年8月、村長選に出馬、無投票当選。04年8月、再選され11月1日合併に伴い失職。1963年9月1日生まれ。自宅は美郷町金沢西根字二ツ柳132番地。