大仙市長選告示へあと7日

選挙戦の幕開け迫る

立候補予定の3氏=農業、組合病院問題で争点共通(4月4日・月)
 
      高野昭次氏     栗林次美氏      伊藤稔氏

  大仙市の舵取り役を決める初の市長選が目前に迫ってきた。8つの市町村が合併して誕生した大仙市。人口約9万6000人は秋田市に次いで県内2番目の都市となる。10日に告示されるその市長選にはいずれも無所属で、元大曲市助役の高野昭次氏(55)、前大曲市長の栗林次美氏(57)、前仙北町長の伊藤稔氏(63)の3人が立候補を表明、活発な前哨戦を展開している。他に動きはなく、この3氏による三つどもえの戦いとなる公算が大きい。今度の市長選、旧8市町村を舞台とするだけに人脈も知名度も複雑に交錯し、3氏ともまだ手さぐりの状態だ。ただ、これまでの記者会見で3氏が重要とした点で共通したのは農業と仙北組合総合病院の早期改築だった。大仙市長選を展望する。

  大仙市の3月2日現在の選挙人名簿登録者数は7万9769人(男3万7312人・女4万2457人)。うち旧大曲市が3万1904人、旧町村部の合計が4万7865人。過去2回の大曲市長選の投票率は80%に達してない。大仙市長選の投票率を仮に80%とすると約6万3800票。3氏の勢力が均衡すると2万1000票台の争いとなる。

  大仙市長選にいち早く立候補を表明したのは高野氏だ。昨年10月に記者会見し、出馬表明した。以来、出身地の旧神岡町を皮切りに旧南外村、旧西仙北町、旧協和町と西部を中心にあいさつ回りして知名度アップに努めた。さらに旧仙北町から旧中仙町、旧太田町と東部にも足を踏み入れた。旧町村はほぼ一巡し、3月からは旧大曲市内を中心に歩き回っている。

  高野氏は03年10月5日の市長選で栗林氏と会社コンサルタントの石塚柏氏と三つどもえを演じ、栗林氏9509票、高野氏9348票でわずか161票の僅差で負けた。石塚氏は6160票だった。

  その高野氏。今度の選挙戦では「大仙市の魅力は農業に特化した都市であり、その農業の魅力を県外にアピールしたい」と訴える。そのため地力を高める工夫を凝らし、「安心安全な農業で観光と結びつけさせ、人口増加と消費力を高めたい」と主張する。仙北組合総合病院の問題では「大仙市の中核的医療機関であり、理想的には郊外に移転新築すべきだが、そうなると商店街にも大きな影響がある。現在地での改築が可能かも選択肢の一つであり、コスト的にも安くやれる。問題はできるだけ早く病院を造ることだ」と話す。

  今回も自民党大曲支部の推薦を得、辻久男県議、それに保守系の旧大曲市議団のほとんどが高野氏の支援に回り、浸透を図っている。3日にグランドパレス川端で開いた女性の会の集いには650人を超す(高野事務所)支持者が集まるなど、婦人層の動きが活発化している。旧神岡町と隣接する旧南外村など西部で町村議員も含めた動きも活発化し、支持を広げているが、旧仙北町を含む東部では伊藤陣営の動きが活発だ。

  高野氏にとって勝敗のカギとなるのは旧大曲市内での得票。前回、戦った相手の一人である石塚氏は先月の総決起集会に顔を出すなど高野氏の支援に回った。陣営に取っては好材料だが、そのままの票の上積み材料になるかは読み切れない。選挙戦のボルテージが高まると同時に「合併は旧8市町村の首長が汗をかいてまとめたもの。事情の分かっている当事者が新市のリーダーとなるべきだ」との声も高まってきた。これに対して高野陣営では「現在の枠組みを決める段階から実務者として携わり、合併に向けての信頼関係を築いた」と反発する。

  栗林氏は昨年12月、「合併協議会の会長として新市建設計画と協定書を作り上げた責任を全うしなければならない」と立候補を表明。市長としての1年半の実績を市役所窓口時間の延長や図書館運営の改善、公共施設のバリアフリー化などだとし、「利用しやすい市役所の実現に努めた。また仙北組合総合病院の早期改築推進会議の設立、住民自らによる地域づくりを目指した『地域いきいきビジョン支援事業』、市民除雪会議など合併後を見据えた施策の基礎固めにも努力した」と強調する。

  連合秋田からの推薦も受け、知事選で3選を目指す寺田典城陣営とも連携しながら運動を展開。県議3期務めた経験と市長としての顔で、旧大曲市内でもまた、旧町村でも知名度はダントツ。しかし、事務所に寄せられた推薦状は高野陣営約200団体、伊藤陣営約130団体に対し、まだ50団体程度と少ない。「うちはいつの選挙でもその程度」と推薦状の多寡は気にしない。

  今度の選挙戦で農業問題に関しては「農村と出稼ぎ問題は表裏一体で、出稼ぎ先の職場訪問などで農村の実態は頭に入っている。大曲は農村あって発展してきた。だから街部と農村との均衡ある発展こそ大事だ」と主張。「大仙市の農地をしっかり守るため国の施策と合わせ、官民一体となった形で農業、農村の指導センターを作り、技術から経営の面まで指導できる体制としたい」と話す。仙北組合総合病院の問題は基本的に移転改築で、その跡地の活用は「病院の新館をどうするかも含め、そう簡単に言える問題でない。大仙市の玄関口としての在りようを一生懸命考えたい」と述べる。

  栗林陣営には旧大曲市内で8500票前後の基礎票がある。また、過去2回の衆院選で取った票を見ると旧7町村で最高時約1万票(1990年2月)を記録している。公職もあって、実際に動き出したのは新市誕生後の先月22日から。しかし、旧町村に入るとまだ父の三郎氏(故人)の熱烈な支持者がいて、地下水脈となって流れている。

  旧大曲市内では渡部英治県議が新たな支持者の掘り起こしに力を入れ、旧町村部では元衆院議員の細谷昭雄氏、それに前西仙北町長の小松隆明氏、県議の佐々木長秀氏も支持者の掘り起こしに懸命だ。さらに町村の議員も独自のルートで動き、細谷氏は教職員時代赴任した旧太田町でもてこ入れを図っている。

  伊藤氏は年明け後の1月11日の出馬表明だった。「合併推進に最初から取り組んできた一人として汗をかく責任がある。大仙市にかける夢を実現するため『新市まちづくり計画』に向けてささげたい」と出馬表明。地元、旧仙北町を中心とした支持者の対応は素早く、ほぼ1カ月後には旧大曲市と旧神岡町を除く町村に後援会が組織化され、陣営の機動力が発揮された。

  自民党の原盛一県議が全面的にバックアップし、熊谷勲旧中仙町長が後援会連合会長に就いた。旧市部から2人出馬したのに対し、旧町村からの立候補は伊藤氏だけ。合併時に旧町村部の人たちが不安を抱いたのは「大曲だけが発展し、農村部は取り残される」との埋没感だった。それだけに伊藤氏の出馬に期待するとの声も多い。2月の後援会事務所開きには旧太田町長と東部の町議や議長らが多数、顔を出した。そしてその旧町の議長や元議長がそれぞれの地区の後援会長をしている。

  立候補に当たっては「8つの地域の発展、融和を目指したい」と強調。出身校の大曲農業高校の同期生、旧仙北町議、助役時代から広げた幅広い人脈を通じて、旧町村部だけでなく旧大曲市内にも活発に入り込んで支持者を掘り起こしている。

  農業問題では「大仙市の基幹産業は農業。若い人が夢と希望を持てる農業振興を図るため、転作田を有効活用し、転作でなく本作とするような農業としたい」と訴え、「文化、芸術、スポーツ、産業など農村部と街部とが交流を深め、情報が行き来する交通網の整備に力を入れたい」と力を入れる。仙北組合総合病院に関しては「なるべく早い機会に移転改築し、利便性を高めたい」と強調し、その跡地利用については「大仙市の中心としての機能を発揮するような活用を考える」と述べた。

  町議時代からの豊富な選挙経験もあってフットワークは軽い。連合秋田にも推薦を申し入れたが、連合は栗林氏支持へと回った。しかし、伊藤氏の支持基盤は保守系。意に介さず、若いころからの交流で得た知人を求めて旧大曲市へも積極的に入り込み、情勢を複雑化させている。