戦いの火ぶた切られる
伊藤、栗林、高野=予想の3氏、立候補を届け出(4月10日・日)
| 伊藤稔候補 | 栗林次美候補 | 高野昭次候補 |
大仙市初の市長選挙は10日告示され、午前8時半から神岡総合支所隣の神岡福祉センターを会場に立候補の届け出を受け付けた結果、届け出順にいずれも無所属で元仙北町長の伊藤稔氏(63)、元大曲市長の栗林次美氏(57)、元大曲市助役の高野昭次氏(55)の3人が立候補した。午後5時に受け付けは締め切られるが、この3人による三つどもえの構図がほぼ確定した。3氏はそれぞれの選挙事務所で第1声を挙げた後、16日までの1週間にわたる熱い戦いの火ぶたを切った。
17日午前7時から午後7時まで117投票所で知事選と同時に投票が行われ、午後8時15分から大曲体育館で即日開票される。
開票作業が終えるのは知事選午後10時半ごろ、市長選は11時半ごろと見られる。10日現在の有権者数は男3万7361人、女4万2516人の合わせて7万9877人。うち旧大曲市が3万1912人、旧7町村で4万7965人。
戸地谷川前にプレハブの事務所を構えた伊藤陣営は午前7時半から神事で必勝を祈願。事務所前の広場には次々と支持者が駆けつけ、出陣式が始まった9時ごろには1500人もの人で膨らんだ。
陣営は熊谷勲元中仙町長が総括責任者に、JA秋田おばこ農協の澁川喜一組合長が掲示責任者、さらに原盛一県議が後援会長になるなどそうそうたる顔ぶれ。そして高貝久遠元太田町長や門脇一男元太田町議長、小松重文元中仙町議長ら東部の旧町村議らが大勢、顔を出してムードを盛り上げた。
熊谷元町長は「今度の大仙市長選、前大曲市長の栗林さん、前大曲市助役の高野さんが出ることは分かっていたが、もう一つ選択肢があっていいのではないか。旧大曲市から二人が出るのではなく、私ども町村の方からも誰か出さないといけないと思っていた。その願いを伊藤さんが受けてくれた」と期待を込めた。そして「大仙市の一つの目標は安全安心の農業と食糧生産基地として発展させることだ。そのためには農業に深く関わってきた伊藤さんこそ市長にふさわしく、そういう位置にはい上がらせてもらいたい」と支持を訴えた。
続いて澁川組合長が「伊藤さんは農業の大ベテラン。『すずさやか』という大豆を伊藤さんはJAに持ってきてくれた。組合員はその大豆に大変、期待している。大豆は1シーズンで一粒が100粒にもなる。この選挙もあと7日間。一粒が7粒になるよう実りの日を迎えたい」と激励した。
原県議に続いてマイクを握った高貝元太田町長は「伊藤さんは立候補を表明以来、旧8市町村をくまなく回って支持基盤の拡大を図った。そしていよいよ決戦の火ぶたが切り落とされた。私どもは一致団結して、後方支援に回り、大仙市初代の市長誕生を実現させなければならない」と檄を飛ばした。
最後にマイクを握った伊藤氏は「大仙市にかける夢を伊藤稔と共に実現したいと同志の方々が昼と言わず夜と言わず、後援会活動の充実拡大のため一生懸命、頑張ってくれた。8つの市町村は対等合併であり、旧8市町村どこに住んで暮らしても平等に行政の恩恵を受け、夢と希望を持って暮らせる大仙市としたい」と訴えた。さらに「出馬表明した時点では第3の男と言われたが、投票日には皆さんの絶大な力添えで第3の男がトップに躍り出た、何とかそう言う位置にはい上がらせて頂きたい」と支持を求めた。「伊藤ガンバレよ」。そうした声の合唱に押し出されるように選挙カーに乗り込んだ伊藤氏は笑顔の中にも闘志を燃やしていた。
国道13号バイパス沿いの建物を借り切って事務所とした栗林陣営。衆院選、県議選などこれまでの選挙戦では一度も神事をやったことがなく、午前8時半からの出陣式は淡々と始まった。栗林氏は「キリスト教を信じている人もおれば、仏教の方もいる。そういう人たちのことも配慮した」と話し、「みんな良くやってくれたのでいい気分で選挙をやれます」とさわやかな笑顔を見せた。
「大丈夫だべか。勝てるべか」。駐車場に車を置いて事務所に駆けつける女性支持者たちからは不安の声も漏れたが、薄緑色のジャンパーを着たスタッフの活発な動き、そして事務所前の広場が次々と人で埋まるのを目にすると心配も吹っ飛んだように「大丈夫。栗林さんならきっと勝てる」と手渡された乾杯用のウーロン茶を握りしめていた。
運動員が「戦車」と呼ぶ選挙カーのスピーカーのスイッチが入れられると総括責任者で元西仙北町長の小松隆明氏が「いよいよ決戦の火ぶたが切られた。栗林さんは大曲市長として、また合併協議会の会長として大仙市誕生のため艱難辛苦、一番難儀した人だ。合併が壊れかかった時もあった。悩んで入院するのではないかと思う時もあった。それでも見事なリーダーシップを発揮し、大仙市を誕生させた。そのトップリーダーには誰がなるべきか。大曲市長として福祉、教育、市民生活に確実な実績を残した栗林さんしかいない」と檄を飛ばした。
続いて選対委員長の渡部英治県議、そして寺田典城後援会長の阿部三琅氏、それに女性の会を代表して佐藤多喜子さん、友人代表の佐々木長秀県議が次々と応援の弁に立った。このころになると事務所前は800人を超える支持者で埋まった。
最後にマイクを握った栗林氏は「住民と共同で大仙市を作ろうと意識しながら、大曲市政を担当してきた。役所の皆さんがもっともっと住民の中に入って住民の声を聞いて、住民と共に汗を流し、住民の課題をまとめあげ、市長も動く、職員も動く。そうしたまちづくり、地域づくりでなければ大曲市も大仙市も良くならないと取り組んできた」と強調。持論である「弱い人にいかに政治の光りを当てるかを原点に常に行動してきた」と述べ、「弱い立場の人たちの声をくみ上げて施策を展開していくのが政治だ」と訴えた。そして「住民の信頼なくては政治はうまくいかない。そんな訓練を受けながら農民運動、米価運動、出稼ぎ運動などで仙北郡内の隅々まで回って県議をやってきた。その経験と合併をまとめた責任者として大仙市を軌道に乗せるため自分の全てを尽くしたい」と声を振り絞った。
大曲佐野町に昨年10月から事務所を構え、大仙市長選に向けて着々と準備を進めてきた高野氏。その事務所前には約900人の支持者が集まり、神事を終えて出てきた高野氏を拍手で迎えた。前回の市長選でも支持に回った保守系市議団、それに旧大曲市役所OBらの顔も多く見られた。婦人層への浸透に力を入れたという陣営。女性支持者の動きが活発だと事務所の幹部たちは自信を深めていた。
熱気のこもった中、マイクを握った中島規道後援会長は「高野さんはこの半年間、毎日自分の足で回って地域の実情と文化を肌で感じてきた。その熱意は市長になったあかつきにきっと役立つものと信じている。高野さんの卓越した行政能力。次々と生み出す政策とアイディア。大仙市を任せられるのはそうした能力を持った高野さんしかいない。大仙の風を吹かせ、住みよいまちにしよう」と訴えた。
選対本部長の辻久男県議も「新しい時代の幕開けとなった。旧弊にとらわれない政策を打ち出し、しっかりとした舵取りを任せられるのは高野さんだけだ」と持ち上げ、「3人の戦いは拮抗している。前回のあの僅差で敗れた悔しさを二度と味わってはいけない。高野さんのために力を貸してほしい」と訴えた。旧町村長を代表して山谷屮二元協和町長もマイクを手にし、「大仙市には行政基盤と財政基盤を安定させなければならない大きな課題がある。基金や起債などの問題も抱えている。そうした課題を解決するには行政に精通した人でないと大変だ。高野さんこそ大仙市長としての適任者であり、8市町村の均衡ある発展を任せられるのは高野さんしかいない」と訴えた。
最後にマイクを握った高野氏は「立候補を表明して以来、大仙市全域を回った。合併という行政改革は農村部と山間部で抱える課題、街部で解決していかなければならない事柄があり、それを直視しながら回ってきた」と述べ、「その課題解決のためには対話の促進と改革、そして望みを持たなければならない。この3つを基本姿勢に農業振興と商店街の活性化、教育の充実と筋道を立てて進めたい。またこれからの行政にはスピードアップと決断力が求められる。大仙市づくりの枠組みを決める段階から合併に携わってきた責任を果たしたい」と決意を述べた。最後には「戦うステージが整った。皆さんとともに最後まで頑張るので声援をお願いしたい」と力強い声で訴えた。
妻の裕子さんが選んだという黒のスーツに身を包んだ高野氏は見守る支持者の群れに飛び込んで次々と握手。大仙市初代議長となった加藤勲氏が乾杯の音頭をとって、選挙カーの出発を見守った。
伊藤稔氏=キャッチフレーズは「8つの地域の発展、融和を目指して!」▽大仙ブランドの安全・安心の食糧供給基地づくり▽豊かな森林資源を活かした地域づくり▽農林業の多面的機能で環境づくり▽史跡や伝統芸能など文化財も生かした、心豊かな人を育むまちづくり▽観光、レクリエーションの拠点づくり▽希望をもって働ける就業支援▽商工業の振興と積極的な起業支援▽地域間交流と国際交流の発展▽安心して子育てのできる体制づくり▽健やかに暮らせる福祉医療の充実▽出前行政による住民参加のまちづくり▽地域行政の強化と人材育成▽身近で効率的な行政運営─など。
経歴=旧仙南村生まれ。大曲農業高校卒。1976年から旧仙北町議連続4期当選。同町監査委員、議会総務委員長を歴任。1991年7月から94年6月まで同町助役。02年5月の町長選に出馬して初当選。3月22日、合併で「大仙市」誕生と同時に町長、失職。自宅は同市横堀字表木。
栗林次美氏=キャッチフレーズは「住民の目線に立った行政の推進」▽地域の特色、独自性を生かした大仙市の早期の一体性確立▽情報公開と説明責任、住民参加による開かれた市政の展開▽官民による農業、林業指導センターの設置▽企業誘致と若者の職場確保・福祉・健康分野での雇用創出▽小児医療の充実と子育てサポート体制の充実▽学校施設の整備、少人数学級、障害児(者)教育の充実▽地域医療の中核である仙北組合総合病院の早期改築▽バリアフリー社会の推進▽8市町村の幹線道路網の体系的整備▽行政を最大の〃サービス産業〃と位置づけた住民サービスの展開─など。
経歴=横手高校を経て上智大学経済学部卒。1970年、ダイヤモンドタイム社入社。76年12月退社して、父・栗林三郎代議士(故人)秘書となる。87年4月、県議会議員に初当選。90年、衆院選出馬のため県議を辞任。95年4月の県議選で再選。03年4月、県議を任期満了で退任し、10月5日執行の旧大曲市長選に出馬、初当選。3月22日、合併と同時に失職。自宅は同市大曲栄町。
高野昭次氏=キャッチフレーズは「すべての市民に夢と希望を運ぶ『大仙市の風!』」▽新市の一体性を強くする大仙道路のネットワークの整備▽中核的医療機関の新改築を図るため、その財源の確保と建設基盤の整備を最優先課題とする▽学校施設の改修を重点的に取り組む▽子育て支援を強化し、出産祝い金の増額、乳幼児医療費の軽減、高齢者による子育てサポート制度の創設▽力強い農業をつくるため農業法人化などを促進し、食糧供給基地の構築とあらゆる分野での雇用の創出▽特区を生かした農業観光の推進▽花火産業の推進と「花火ミュージアム」の建設─など。
経歴=旧神岡町生まれ。横手高校から専修大学経済学部卒。72年4月、旧大曲市職員に。総務部市長公室長、総務部企画調整課長兼大曲駅周辺総合整備対策室長、産業経済部長を経て2000年8月、助役に就任。03年3月、市長選出馬のため辞任。自宅は同市大曲中通町。