選挙カーを追って(3)
初代の大仙市長を決める7日間の選挙戦が始まった。10日の告示と同時に立候補を届け出たのはいずれも無所属で、元仙北町長の伊藤稔氏(63)、元大曲市長の栗林次美氏(57)、元大曲市助役の高野昭次氏(55)の3人。選挙カーは合併した旧8市町村を東奔西走し、「お願い」を叫んでいる。大仙市の面積は約866平方キロメートル。選挙カーを半日追っただけで取材の車の走行距離は軽く100キロを超える。各候補の戦い振りをルポしたい。
8つの市町村が心一つにを訴えて(4月12日・火)
選挙運動初日は出身地の旧神岡町とその隣の旧南外村を回って確かな手応えを得た高野候補は2日目の11日は協和、西仙北地区を走った。そして3日目の12日、初めて東部へと戦線を移し、太田、中仙の両地区を回った。
「西仙北は別としても協和地区ではまあまあの感触を得たので良かった。東部は伊藤さんに追いつけないと思うが、選挙カーが入るとそこそこに人が出てくれますから頑張りたい」と高野氏。
一面に田んぼが広がり、網の目のように枝分かれした農道や町道沿いに住宅がポツリ、ポツリとあるだけ。選挙カーはそうした農村部を縫うように走り、遠くから窓を開けて手を振ってくれる人、表に出てくれる人、田んぼで農作業の手を休め見守ってくれる人を見つけては、ウグイス嬢が「見えてます。ありがとうございます」と呼びかける。先導車、選挙カー、それに後続の車7台が続き、運動員の数は20人を超す。
まるで自動車学校の練習コースのようなクランクが連続する農道を車は走り、「皆さんと共に手を取り合って高野は豊かな大仙市をつくります」とウグイス嬢。一人でも表に出てくるのを見つけると選挙カーは単独行動を取ってでも農道奥の家に向かって「オ・ネ・ガ・イ」に走る。そして辻久男県議、旧大曲市議の高橋孝夫、大坂猛夫(現・大仙市議)が後を追い、旧太田町議(同)と太田地区在住の後援会員が「頼むシ」とフォローする。
笑顔と握手がそのまま票につながるかは読めない。それでも「高野という印象を残せれば」と運動員。夫婦で出迎えた住民は「高野さんか。親戚からも頼まれたし、知り合いからも声があった。会ったのは今日が初めてだが、いい感じの男だ」と好感を寄せた。伊藤氏の支持者が多いと言われる太田地区だが、後援会組織がそれなりに動いた成果が見られた。
国見の集落会館では20人ほどの住民が出迎えた。マイクを握った高野氏は「8つの市町村をくまなく回った。豊かな自然があり、農地が広がっている。この農地こそ先祖から受け継いだ宝として大事にしたい。農業の振興、雇用、高齢者の介護、教育、子育て支援と課題は多いが、すぐ取り組んでいかなければならないのは8つの市町村が心を一つにしてお互いを理解し、尊重し、思いやる気持ちを持てる大仙市にすることだ。そのためにもこの度の戦いを勝たせてもらいたい」といくぶんかすれた声で訴えた。
選挙カーが去った後も住民と立ち話するのは太田町在住者。「伊藤さんに比べたら高野さんの知名度は半分もない。だから地元の者が直接、お願いしてカバーすることにした」と話した。