栗林氏が三つどもえを抑える
旧市内で安定した強み、旧町村でも手堅くまとめる(4月18日・月)
当 栗林次美=23.070
次 高野昭次=21.780
伊藤 稔=17.497
大仙市の住民は初代市長に栗林さんを選んだ─。旧大曲市とその周辺7町村の合併で3月22日に誕生した新市「大仙市」初の市長選挙は17日、市内117投票所で投票が行われ、午後8時15分から大曲体育館で即日開票された結果、元大曲市長の栗林次美氏(57)=無所属=が2万2070票を獲得して初当選を飾った。元大曲市助役の高野昭次氏(55)=同=は2万1780票で、290票の僅差で敗れた。元仙北町長の伊藤稔氏(63)=同=は1万7497票だった。当日の有権者数は男3万6895人、女4万2118人で計7万9013人だった。投票者数は6万1768人で、投票率は78.17%だった。(18日午前0時)
今度の市長選で栗林氏は「みんなで創ろう新生・大仙市」を合言葉に「住民の目線に立った行政の推進」を訴えた。大仙市が誕生する先月22日まで大曲市長としての公職に追われ、運動の出遅れが心配されたが、大仙市をまとめあげた市長としての実績と経験、それに高い知名度もあって大票田である旧市内で爆発力はないものの比較的、安定した戦いを展開。渡部英治県議の後援会もバックアップし、さらに連合の組織的な応援や知事選では寺田典城候補と連携してムードを盛り上げ、戦いをどうにか軌道に乗せた。
また旧町村部では旧西仙北町の小松隆明元町長、それに佐々木長秀県議も支援、同町を中心に西部でも手堅く票を固めた。加えて旧神岡町では細谷昭雄元衆院議員とその支持者も非自民系の票の掘り起こしに力を入れ、栗林氏を支えた。東部でも父・三郎氏(故人)時代から築いた出稼ぎ問題など労農運動の流れ、それに過去2回の衆院選での支持者もあって、票を積み重ねた。特に中仙町では寺田知事を支持する町議が活発に動いて栗林氏に少しずつ追い風を吹かした。
最終日の16日は旧市内の遊説に全力投球。マイクを握っては「8つの市町村を一つにまとめあげるのは大変なことだった。住民の幸せを願う町村長が居なくなる不安は当然なこと。壊れかかった時もあった。それを粘り強く話し合ってまとめあげた。しかし、残された課題も多い。大仙市を軌道に乗せるのが政治の仕事であり、自分の責任だ」などと訴えた。
午前中は鈴木陽悦参院議員も運動に加わり、ムードを盛り上げた。街頭での演説は30カ所以上にも上った。スピーカーの音を聞きつけて集まってくる市民は熱心に耳を傾け、栗林氏の説得にうなずいた。「市役所の皆さんがもっともっと住民の中に入って住民と共に汗を流し、市長も動く、職員も動く。そうしたまちづくり、地域づくりでなければ大曲市も大仙市も良くならない。少しは市役所も変わったのではないでしょうか」との呼びかけには共感の拍手が沸いた。
確かに栗林市長が誕生してから、市役所の窓口は午後7時まで時間延長され、図書館も閉館時間が延長されるなど市民サービスの向上を積極的に進めた。また「弱い立場の人に政治の光りを当てたい」を政治信条に公共施設のバリアフリー化など身近な問題にも取り組んだ。乗合タクシーの試験運行、市民除雪会議など合併後を見据えた施策の基礎固めも展開した。そうした実績で栗林氏はマイクから発する言葉で票を稼ぎ、票を上積みした。加えて開票日直前の14日、栗林氏の母・せつさん(90)の急逝も支持者の間に「絶対に負けられない」と運動に拍車が掛かった。
一方の高野氏は昨年10月の出馬表明以来、旧町村を精力的に歩き回り、知名度アップに全力を注いだ。出身地の旧神岡町を中心に旧南外村へと支持層を広め、旧協和町でも多くの町議(現大仙市議)が高野氏を支援。西部で優勢な戦いを展開した。しかし、旧仙北町からは元町長の伊藤氏の出馬もあって足止め。それでも旧太田町では一部の町議(現市議)を中心に後援会員が熱心な運動を展開、旧中仙町でも支持拡大を図った。だが、大票田である旧大曲市内で辻久男県議、保守系市議団の応援を得たものの現職の栗林支持者の手堅さに阻まれ、運動は上滑りに終わった。
伊藤氏は出身地の旧仙北町で圧倒的な支持を得、3候補の中で唯一の農村部代表として旧町村での支持拡大に全力投球。「農村部から首長を出さないと埋没する」との危機感をあおり、「8つの地域の発展と融和」を訴えた。旧中仙町の熊谷勲元町長、旧太田町の高貝久遠元町長も応援、「市長は農村部から」の呼びかけは旧町村での浮動票獲得の材料となった。一方で旧大曲市内でも出身校である大曲農業高校の同期生らが熱心に支援したが、栗林・高野両陣営にはばまれ組織的なうねりにはなりきれなかった。旧市内だけで大仙市全体の4割を占める票があるだけに、それを取り込めなかったのが最後まで響いた。
午後11時ごろ、栗林事務所に当選確実の報が入った。それまで高野氏と横一線に並んだ開票だっただけに不安と緊張感が漂った。そこへ待ちに待った当確の知らせが届いただけに事務所を埋めた300人前後の支持者は「ワー。勝った!」と大歓声に沸いた。
栗林氏はしばらく呆然とした表情だったが、「おめでとう。次美さん。勝ったゾ」の祝勝の声にやっと笑顔。そして美郷町の松田知己町長、田沢湖町の佐藤清雄町長、西木村の田代千代志村長、角館町の石黒直次町長、それに大仙市職務代理者の今野正彬元神岡町長、横手市の五十嵐忠悦市長が次々とお祝いに駆けつけるとガッチリと握手。細谷昭雄元衆院議員、渡部英治、佐々木長秀両県議もお祝いの言葉をかけ、バンザイ三唱が何度も響いた。
勝利を勝ち取った栗林氏は「明日から仕事なんで、大仙市を軌道に乗せる約束で戦ったので仕事のことが頭の中でもう走り出している。勝因は自分の選挙戦は限られた時間しかなかったので、選挙期間中、自分の基本的な考え方、政治的な考えをできるだけ街頭から訴えようとしたのが評価されたと思う」と喜びを語った。