新酒の初しぼり始まる
大仙市南外「出羽鶴酒造」=25日から全国販売へ(11月17日・木)
|
|
山に降った雪は17日朝、里にも下りてきた。季節は雪を迎えるようになった。雪を待っていたかのように大仙市南外字悪戸野の「出羽鶴酒造株式会社(伊藤辰郎社長)」ではこの日、新酒の「初しぼり」が行われた。コメのかすが混じってまだ乳白色状態の原酒を袋に詰め、槽(ふね)と呼ばれる大きな升に積み重ねると酒が酒の重みで絞り出され、チョロチョロとろ過された状態で流れ出て来る。それを見守る杜氏たち。そしてひと口、口に含んで出来ばえを味わい「ウン。辛味と切れがあっていい味だ」と顔をほころばす。雪を迎え、雪と共に活気づく冬の風物詩、酒蔵の仕事始めが今年も幕を開けた。
酒造りの責任者である杜氏の佐藤賢孔さん(55)をはじめ、出羽鶴酒造の蔵人たちが蔵に入ったのは10月15日。杜氏の下で働く「頭(かしら)」、「麹(こうじ)師」、コメを蒸すのを役目とする「かま屋」、「精米長」など独特の名前で呼ばれる蔵人は13人。全員が気心の知れた南外地域在住の人たちだ。
蔵入りすると同時に入荷した酒米「秋の精」26俵(60キロ詰め)を洗って米ぬかを落とし、釜で蒸す。そして酒母造りなどの仕込みを行ってホーロー製の大型タンクで先月27日からこの日まで19日間かけて、じっくりと発酵させ原酒となる「醪(もろみ)」を誕生させた。
佐藤さんは先月26日から蔵に泊り込んで「醪」の温度管理に神経を遣った。酒の発酵には室温6〜7度が適温で、それより高いと酵母が活発に活動して簡単に酒になってしまい、日本酒独特の味の深みを失う。酵母もある程度、気温の低い厳しい環境で過ごさせないとわがままになってしまう。一方で気温が冷え過ぎると酵母の活動は鈍り、酒の甘みも失う。
このため佐藤さんは蔵に泊り込んでテレビの天気予報に神経を集中させては温度管理に気を遣った。「今年は気温が高くてこちらが冷や汗をかきました」と佐藤さん。外気が上がってはタンクを冷却機で冷やすなど、発酵を見守った。「酒のうま味は寒さが造るんです」と佐藤さん。蔵人たちは「暖房のある部屋なんてとんでもない」とこの日もきりりと冷え込んだ絞り場で、次々と酒を袋詰めし、槽(ふね)の中に寝かせていた。
そしてチョロチョロと小声で鳴くような音で流れでた酒を口に含み「ウン。まあまあの味だ」と目を細めた佐藤さんは、酒蔵独特の風習として伝わる玄関の「杉玉」の交換作業をした。杉の葉っぱを束ねた「玉」は新しい酒の誕生を知らせる象徴だ。杉の葉は昔、酒を入れる桶(おけ)の漏れをふさぐのにも使われ、酒の神さまにとって杉は神聖なものだという。蔵ではこれから雪の冷え込みと同時に酒の仕込みも本格化し、来年4月いっぱいまで蔵人の作業は続く。
初絞りとなった酒は25日から「出羽鶴純米酒『初しぼり』」として全国販売される。絞りたての風味を残すためアルコール度数はいくぶん高めの16%。720ミリリットル入りで1050円(税込み)、1.8リットルで2310円(同)。生酒だけに冷やが一番。暮れから正月のめでたい酒として待っているファンが多いという。(ホームページは下記から)