イネ、大豆の3新品種を育成

東北農業研究センター水田利用部

栄養価の高いイネ、青臭みなくした大豆(9月16日・金)
 
 新品種のイネ「恋あずさ」を説明する山口室長。
新品種の「きぬさやか」(右)。

  大仙市四ツ屋の東北農業研究センター水田利用部では16日、イネ、大豆の計3品種が農林水産省農作物新品種として命名登録されたと発表した。イネは耐冷性が強く栄養価の高いギャバ(GABA・ガンマアミノ酪酸)を多く含む巨大胚水稲「恋あずさ」と直播栽培に適する東北地域向け稲発酵粗飼料用の「べこあおば」の2種類。そして大豆は青臭みやえぐ味が少なく豆乳に好適な「きぬさやか」。稲については稲育種研究室の山口誠之室長が、大豆については大豆育種研究室の湯本節三室長が発表した。

  恋あずさは「北海269号」と「奥羽316号」を1989年から交配させ、選抜を繰り返したうえで誕生させた。山口室長は「消費者の健康志向の高まりから、通常の玄米よりギャバ含量が高い発芽玄米の市場が拡大している。中でも胚芽が大きい巨大胚米はギャバ含量が一般の米より高いため、発芽玄米にするとギャバ含量はさらに高まる」と説明。そして「これまでその巨大胚品種として『はいみのり』(2000年)、『めばえもち』(02年)が育成されたが、『はいみのり』は極晩生のため東北地域では栽培できず、『めばえもち』はもち品種だったため用途が限られていた。こうした事情を背景に東北での栽培に適した巨大胚のうるち品種の育成を目指した」と報告した。

  発芽玄米は玄米を水に浸けて、胚芽から少し芽を出させたもの。発芽することで酵素が活性化し、栄養価が高まる。特にアミノ酸の一種であるGABAの含量が高まる。このGABAは血圧を降下させたり、神経興奮を抑えるなど〃いやし系〃の働きがある。「コシヒカリ」や「あきたこまち」を使ったものが既にスーパーなどで発売されている。

  山口室長は「恋あずさ」の特徴について「あきたこまち」と同程度の出穂期で、東北中南部では〃早生の晩〃に属するうるち品種だと紹介した。しかし、胚芽の重さは「あきたこまち」の約2倍あり、玄米に含まれるギャバ含量は玄米100グラム当たり13ミリグラムで、あきたこまちの玄米の6.5倍、発芽玄米にするとギャバ含量は24.2ミリグラムと増え、コシヒカリ発芽玄米の約2倍に増加するという。

  さらに耐冷性が〃極強〃で冷害の影響を受けにくく、東北での栽培に適した新品種だという。ただ、発芽玄米にした際に硬さや舌ざわりが気になる場合は「あきたこまち」などの一般米や粘りの強い低アミロース米と混ぜるとおいしく食べられる。栽培上の留意点としては、種子の出芽率が一般品種よりやや劣るため、播種量を重量比で約1.5倍増やすことで一般品種と同程度の出芽数を得られるという。しかし、いもち病に弱いため、適期に防除を行う必要があると注意した。

  「恋あずさ」という名前の由来については「恋の芽生えと胚芽の芽生えをかけ、恋しくなるほど食べたくなる米であること、また『あずさ』は最初に恋あずさを使って長野県松本市の業者が発芽玄米を開発したことから、同県を流れている『梓川』から付けた」という。

  次に稲発酵粗飼料、いわゆる飼料イネの新品種「べこあおば」について山口室長は「東北地域向けの品種として、また直播き栽培にも適し、省力生産が可能な品種として育成した」と述べた。米は生産過剰傾向で、水田の転作は拡大されるばかり。一方で国内産の安全な飼料の自給率は低く、その生産拡大が課題となっている。

  このため飼料イネがその自給率を高め、同時に余っている水田の有効活用できる転作作物として注目されているが、これまで育成された稲発酵粗飼料用品種「夢あおば」「クサユタカ」「ホシアオバ」などは晩生のもので、東北に適したものは少なかった。そこで1996年から「オオチカラ」と「西海203号」を交配させ、選抜を繰り返し、東北に適した飼料イネの育成を図り新品種「べこあおば」を誕生させた。

  「べこあおば」は「クサユタカ」より出穂期で2日程度、黄塾期で7日程度早く、東北中南部では〃中生の晩〃に属する品種。玄米は極大粒で、一般品種との識別性がある。また消化吸収可能な粗飼料の収量である「TDN収量」は、多収品種「ふくひびき」より1割程度多収だ。さらに「クサユタカ」や「ふくひびき」より倒れにくく、直播栽培に適しているという。ただ安定した乾物重と栄養価を得るためには、黄塾期以降に収穫を行うべきだと注意した。

  「べこあおば」の名前の由来は東北の方言である「べこ(牛)」が好んで食べる飼料イネで、東北に普及してほしいとの願いを込めた。

  豆乳に好適な大豆新品種「きぬさやか」は大豆育種研究室の湯本節三室長が発表した。大豆加工食品の中でも豆乳は「大豆丸ごと飲料」などの商品名で、消費量が急速に増大しているが、大豆特有の青臭みやえぐ味があって、嗜好性を低下させているという。そこで青臭みの原因であるリポキシナゲナーゼを無くし、えぐ味を出すグループAアセチルサポニンを欠失した品種の開発、育成に取り組んだと湯本室長。

  青臭みの原因であるリポキシゲナーゼを全て欠失した「刈系508号」を母に、えぐ味を呈するグループAアセチルサポニン欠失性の「刈交0459F」を父として人工交配を行い、選抜・固定を図って育成した。

  その特徴と育成の留意点を湯本室長は「病虫害抵抗性では、モザイクウイルス抵抗性は強、紫斑病と立枯れ性病害抵抗性はやや強。しかしシストセンチュウ抵抗性は弱い」と述べた。一方で「花色が主要品種にはまれな白であり、栽培時に他の子実収穫用品種との識別が容易だ」とその特徴を強調した。

  栽培上の注意点としては単独の集団栽培を行うとともに収穫・調整時に異品種が混入しないよう、純度管理の徹底が必要だとした。またシストセンチュウ抵抗性が弱のため、連作やシストセンチュウ汚染ほ場での栽培は避けなければならないと語った。

  「きぬさやか」の名称は豆乳、豆腐の食感が絹のようになめらかで、スッキリしたさわやかな味わいであることから名づけたという。

  3品種とも東北農業研究センター・氏原和人所長を研究推進責任者に、同センター水田利用部・荒木均部長を研究担当部長に進めた。