美郷町六郷を舞台に映画撮影

フランス人とカナダ人

美しい風景を背景に日本の結婚式と葬儀を描く(4月13日・木)
 
左から田村さん、マルタンさん、ダニエルさん、そして伊藤さん。 映画撮影の打ち合わせをするダニエルさんら。

   美郷町六郷地区でフランス人を監督に、カナダ人がカメラマンとなって映画撮影が行われている。監督はマルタン・フルニエさん(37)、カメラマンはダニエル・デジレさん(35)。どちらも香港在住。マルタンさんはフランスの大学から中国経済研究のため派遣された経済学部助教授。ダニエルさんは1992年から95年までALT(外国語指導助手)で当時の田沢湖町に在住したことがあり、現在は香港の日本人学校で英語を教えている。

  マルタンさんは京都には1度だけ足を運んだが、秋田は初めて。一方のダニエルさんは田沢湖に在住中、美郷町六郷で弱電部品を製造する「美郷コイル」の経営者・田村淳さん(36)と知り合いになり、六郷を何度か訪れた。その時に観た数多くのお寺や神社、清水もある美郷町の自然の美しさが気にいっていた。

  学者でありながら、映画制作もしているマルタンさんと香港で知り合ったダニエルさんは田村さんの住んでいる六郷を舞台に日本の伝統や風習を素材にした映画を撮ってみないかと提案。意気投合して田村さんに協力を依頼し、8日から田村さん宅に泊まり込みで映画撮影を始めた。

  二人が撮る映画は向かい同士となっている親類の家で、結婚式というおめでたいことがあったその日に亡くなった人がいて、お祝いの宴会と二次会を終えた後、不幸のあった親類の家に「通夜」に行くというストーリーをコメディタッチで描くもの。結婚式も通夜や葬式も日本ならではの文化と風習が観られると二人は話す。

  映画撮影の協力を引き受けた田村さんは同町の田口塗装株式会社に勤務している知り合いの伊藤紀代子さん(37)=大仙市下深井=にも「手伝ってくれ」と声を掛けた。そして美郷町六郷観光協会も全面的に協力を申し出て、映画に出演してもらう人集めや撮影に必要な衣裳や小道具集めに走り回った。

  結婚式のシーンに欠かせない花嫁と花婿の衣裳は大仙市大曲浜町の「グランドパレス川端」が無償で貸し、その着付けは大曲須和町の「中部きもの秋田文化学院」が手伝ってくれた。そして葬儀のセットは「六郷葬儀社」が全面的に協力した。また照明道具は六郷地区の戸沢板金が作業用のライトを貸し出してくれた。

  結婚式は神官と巫女による純日本風で挙行された。また総合宴会場である「アクアホール」も撮影場所を提供、披露宴を終えて出てくるシーンをそこで撮影した。さらに「浄光寺」では葬儀の模様も撮影した。

  出演する人たちは美郷町、大仙市の人たち40人ほどで、幼い子どもから高校生、さらに70代のおじいさんから、おばあさんまで多彩。出演者も衣裳協力も道具類の貸し出しも全てボランティア。

  監督のマルタンさんはフランス語と英語、それに北京語しか話せないが、カメラマンのダニエルさんや田村さんの通訳で撮影は進んだ。映画は劇場で公開するものではなく、香港とフランス、東京での短編映画祭に出品するもの。出演者の多くは日中、仕事を持っているため、撮影は主に夜6時ごろから9時ごろまで。ただ先週の土・日曜だけは朝から晩までの日程で撮った。映画はデジタルビデオカメラを使っての撮影で、最終日の15日までには10時間前後の長さとなるが、それを20分から30分のショートフイルムに編集する。

  マルタンさん、ダニエルさんは「映画にセリフはないが、撮影を通じて結婚式はこうやるものだとか、葬儀はこんな風にと出演してくれる人たちが次々とアイディアを出して来れて一つのファミリーのような雰囲気で撮影が進み、とても感謝している」と話す。そして「日本の結婚式はとても伝統的で、フランスやカナダよりも美しいものだった」と感動している。

  劇場公開でないから、映画を撮影しても興行収入にはつながらないが、出品する短編映画祭で入賞すれば、次の大きな映画を撮れるステップになると二人は話す。映画は二人にとって趣味を超越した〃トライ!〃だという。

  12日夜は田村さん宅と向かいの家を舞台に映画撮りが行われた。結婚式の二次会を終えた親類の人たちが、田村さん宅の通夜に顔を出すシーンの撮影だった。二次会の世話をした女の人は黒い割烹着で泣きながら亡くなった人の家へ向かう。そしてまだ白いネクタイ姿のご主人は酔っぱらってフラフラの状態で表へ出て、歩きながら黒いネクタイに変えるシーンを演じた。

  出演者はただ役を演じるだけでなく、時にはマイクを持ったり、カチンコを鳴らしたりと下働きもする。カメラを回すダニエルさんは通夜に向かおうとする女性や男性に「アクション」と合図し、撮影がうまくいくと「オッケー、オッケー」と両手を上に挙げて大きな「○」を作った。

  マルタンさん、ダニエルさんは「映画が完成したら作品をDVDに録画して全員にプレゼントしたい。それがお礼です」と笑顔を見せた。映画祭にはビデオからフィルムに焼き付けて出品するという。