脳性まひを乗り越え教員に
秋田市のガクちゃん先生、記念講演(8月21日・月)
NPO法人障がい者自立生活支援センター「ほっと大仙」(石川和美理事長)では20日、大仙市飯田の特別養護老人ホーム「こもれびの杜」で総会を開き、05年度の事業報告を行った後、06年度事業計画及び収支予算などを決めた。
「ほっと大仙」は超高齢化社会を迎え、誰もが「障害者」となり、ハンディを抱え込む可能性を迎えた今、障害者自身が福祉サービスの受け手から担い手となって、自らの手で必要なサービスを提供できる事業を作り上げようと04年8月に立ち上げた。現在、会員は賛助会員も含め128人。
総会には約50人が出席。活動報告では秋田県NPO企画提案事業の業務委託を受け、県における在宅就労支援事業者(バーチャル工房)の可能性を探る調査・研究を行い、行政と大学とが連携できた成果や、その事業を契機に小規模作業所「ほっぺ」内にIT部門も誕生し、障害者の在宅での就労がスタートしたなどの報告があった。また、やきそばカーが完成し、毎週、金曜日には大仙市役所で、第1、第3火曜日には県仙北地域振興局で店を出すなど行政から温かい支援を受けているなどの報告もあった。
そして06年度の事業計画では自宅で暮らす障害者(児)及びその家族が安心して日常生活を営めるようホームヘルパーを派遣し、身体介護、家事援助、相談・助言、外出時の付き添いなどのサービスや福祉店舗「ほっぺ」での駄菓子の販売、ホームページの作成、ネット通販、やきそばカーでの出張調理販売などを決めた。
総会後は脳性まひという重い障害を乗り越え、現在、秋田市の秋田西中学校で教師を務めている三戸学さん(29)が、「自立ってな〜に?自分らしく生きていきたい」と題して記念講演した。
通称「ガクちゃん先生」と呼ばれ、多くの生徒たちに親しまれている三戸さんは、車いすを離せない重い障害にありながら、秋田南高校を卒業後は親元を離れ、自立した生活を目指したいと山形大学教育学部に入学し、数学を専攻。卒業後は中学校の教師を目指し、3回目の挑戦で教員採用試験に合格。現在は秋田西中で数学科主任と情報科学部、それに男子卓球部長を務めている。夢は学級担任になることと、卓球選手として北京パラリンピックに出場することだと言う。
三戸さんはスクリーンに自宅のアパートでの生活の様子などを映しながら、「親元を離れ、自立することに強い憧れがあった」と山形大学を選んだ理由を語り、大学2年目からはアパートで一人暮らしを始めたが、買い物で困った時はキャンパスで学生たちに「すみません。食べ物を買いたいので、一緒に行ってくれませんかと頼むしかなかった。これが切っ掛けで自然に仲間ができ、自分の自信にもつながった」と人と人と言葉のコミュニケーションの大切さを訴えた。
また、待望の中学の先生になって学区内のアパートを探そうとした時は、「あなた本当に一人暮らしできるの。火事や事故があったらどうするの」と何度も不動産屋に言われ、見つけるのに難航したが、最終的に理解のある大家さんの承諾を得て車いすでも生活できるよう玄関や風呂をバリアフリーの住宅に改造し、自分の生活の快適さを求めたなどと紹介。そしてホームヘルパーのサポートを得て朝食、さらにワイシャツ、ネクタイ、背広など学校への仕事着の手伝いをしてもらっているなどと語った。
「障害者自立支援法」に付いては「自立を支援する法律だから実りあるものにしなければいけない。障害者の究極の願いは社会参加であり、地域でどう生きるかだ。そのためにはお金を負担してでもいいから社会参加すべきだ」と述べた。そして自分らしく生きるためには「すみませんと語りかけ、ボタンを掛けてもらえませんか。靴の紐を結んでくれませんかと進んで語りかけ、仲間づくりすることだ。階段を昇れないのも障害者には当たり前のこと。出来ない価値観を認め、声を掛けてお願いしよう。障害があるからこそ声をかける相手を選ぶ楽しさがある」と訴えた。
三戸さんはさらに東京で開催する算数・数学教育研究会に参加するため上京しようと、JR土崎駅から秋田駅までの普通列車と秋田新幹線の乗車券を前日に買おうとしたら「早朝のその時間帯では職員が手薄で、電動の車いすには対応できない。次の電車にしてもらいたい」と予定を変更を求められ、午前中の研修に間に合わなかったなど障害者ならではの困った体験も紹介し、不便なこと、疑問に感じたことがあったら我慢しないで「どんどん、メールや手紙を出して問いただそう」と障害者が暮らしやすい社会になるよう発言し、変えていこうと呼びかけた。こうした三戸先生の視点を変えた話は、聴いている仲間たちを元気づけた。
総会での役員改選の結果は次の通り。
◇理事長=石川和美(大仙市大曲中通町・再)
◇副理事長=高野龍治(大仙市飯田・再)
◇理事=奈良克久(大仙市角間川町・再)、伊藤のぶ子(大仙市大曲大町・再)、伊藤孝市(大仙市藤木・再)、高橋洋子(大仙市大曲上栄町・再)、佐々木弘(大仙市内小友・再)、伊藤貴大(美郷町六郷・再)、安部正(大仙市鑓見内・新)、赤坂二三男(大仙市長野・新)、伊藤智子(大仙市大曲須和町・新)、熊谷美保子(美郷町六郷・新)