大仙市南外の「出羽鶴酒造」

初冬を告げる酒の初しぼり

25日から「新酒」の全国販売へ(11月17日・金)
 

  東の山並みが雪で白く染まり出した。山に降った雪が、里に下りてくるのも間もない。大仙市南外字悪戸野の「出羽鶴酒造」(伊藤辰郎社長)で17日朝、初冬の風物詩とも言える新酒の初絞りが行われた。この日絞り出された酒は25日から出羽鶴純米新酒「新米初しぼり」として北海道から九州まで、全国販売される。初絞りを見守っていた杜氏の佐藤賢孔さん(56)=南外及位=は、玄関先に一番仕込みの「酒」ができ上がったのを知らせる「杉玉(酒林)」をつり下げ、酒造りシーズン到来を告げた。

  日本酒は秋の冷え込みを待って、蔵人(くらびと)が蔵に入り出し、仕込みを始める。酒は気温が低いほどおいしくでき上がることから、雪がしんしんと降り始める冬が本番となる。今年は10月16日から杜氏の佐藤さんをはじめ頭(かしら)、麹(こうじ)師、もと師(酒母)、精米師、蒸し番、槽長(ふなちょう)と呼ばれる職人7人とその助手5人が蔵に入った。そして麹と蒸した米に酵母菌を混ぜた「酒母」を一緒にした「もろみ」をタンクに入れ、櫂棒(かいぼう)を使って29日からこの日まで20日間の時間をかけて発酵させた。

  初絞り用の米は酒造好適米「秋の精」を使った。製造部長の佐渡高智さん(44)=同薬師堂=は「今年の秋は天候に恵まれ刈り取りは順調だったが、米がいくぶん割れ気味だったので米を蒸かすのに気を遣った」と話す。発酵作業の始まった29日から蔵に泊り込んだ杜氏の佐藤さんも「今年も温かかったり、寒かったりと変化が激しく、毎晩、天気予報を確認してタンクや部屋の温度を管理しながら見守りましたよ」と目を細める。佐藤さんの口調から伝わってくるのは「酒は子育てのように大事にしなければ……」という感じだった。今年は秋田県清酒品評会で吟醸の部・純米の部とも知事賞に輝いた。さらに東北清酒鑑評会でも吟醸の部・純米の部とも優等賞を受賞するなど喜びも重なった。

  巨大なタンクの中で発酵した「もろみ」はこうじの粒が混じって白く濁っている。それを酒袋に詰め、絞り出すと原酒が生れる。タンクからパイプラインで運ばれた「もろみ」を2人の蔵人が絞り場で次々と酒袋に受け止め、槽(ふね)と呼ばれる大きな容器に横積みに寝かせ、2層3層と重ねるとその重みで槽の底の管から酒が流れ出す。

  静まり返った絞り場にチョロチョロと酒が産声をあげて流れ出すと日本酒独特の甘い香りが漂う。それを見つめる杜氏の佐藤さん、製造部長の佐渡さんの目は緊張する。そして茶わんで受け止め、手で扇いでは香りを確かめ、口にした二人は「これまでと違ったさわやかさが味に出た」と喜んだ。出羽鶴の新酒はこれまで「こってりと言うか、重い味だと言われた。去年からその重さから脱皮を図ろうと苦心したが、うまくいったようだ」と新趣向の味の誕生に満足そうだった。

  杜氏の佐藤さんはその初絞りを確認し終えると蔵の外に出て、一番仕込みの酒が生れたのを知らせるため「杉玉」を玄関の屋根下につり下げた。杉の葉は昔、酒を入れる桶(おけ)の漏れをふさぐのにも使い、酒の神さまにとって杉は神聖なものという。蔵ではこれから雪を迎え、その冷え込みの中で本格的な酒の仕込みに入り、来年4月いっぱいまで酒造りで活気づく。

  初絞りの酒は「縁起がいい」とあってお正月用の酒として待っているファンも多い。販売するのは1.8リットル換算で2000本。「秋田清酒」で瓶詰し、25日から「新米初しぼり」として全国販売される。絞りたての風味を残すため、アルコール度数はいくぶん高めの16度から17度。1.8リットル詰めで税込み2310円、720ミリリットル詰めで同1050円。

  出羽鶴の蔵の話題や商品情報は下記のホームページからも得られる。また、「酒のらくがき帖」と題したメールマガジンも配信している。

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