大仙市南外の出羽鶴酒造

県清酒品評会で県知事賞に

秋田酒こまちで仕込んだ吟醸酒、純米酒(9月30日・土)
 
 秋田酒こまちを栽培している伊藤さん(左)と高橋さん(右)   二つの県知事賞の受賞を喜ぶ杜氏の佐藤さん。

  大仙市南外字悪戸野の出羽鶴酒造(伊藤辰郎社長)が、県酒造組合の行った県清酒品評会の「吟醸酒の部」で県知事賞を受賞した。また、「純米酒の部」では県知事賞の首席に輝いた。杜氏の佐藤賢孔さん(56)=南外字及位=と製造部長の佐渡高智さん(44)=同薬師堂=は「久々の受賞だが、酒米の一級品『山田錦』を使わず、自分たちで栽培した『秋田酒こまち』を原料に醸造しただけに嬉しさも格別」と喜ぶ。

  清酒品評会の褒賞授与式は26日に秋田市のホテルで行われ、吟醸酒と純米酒の両部門で計9銘柄が最高賞の県知事賞に選ばれた。

  佐渡さんは今回出品した吟醸酒、純米酒について「1月に仕込みに入ったが、麹(こうじ)の造りと仕込みの配合を調整し、普通40日ぐらいかかる発酵期間を30日まで短縮するなど思い通りの経過で仕込めたのが良かった」と話す。酒造りは普通、杜氏に任せきりが多いが、出羽鶴酒造では佐渡さんが酒の設計を務め、杜氏の佐藤さんがその仕込みを務めるという二人三脚で励んでいる。佐藤さんも「米の質が良く、仕込みやすかったのが今回の受賞につながった」と喜ぶ。

  酒米の山田錦は灘の酒で知られる兵庫県で産まれた。酒造りの好適米として全国に知れわたり、全国の新酒鑑評会では「山田錦の部」と「それ以外の部」に分けられるほど酒米としての格が違う。一方の「秋田酒こまち」は県農業試験場で作られた純粋な秋田産。

  出羽鶴ではその秋田産まれの米で酒造りに挑戦したいと、同社の蔵人である高橋久さん(45)=南外字大柳=と、伊藤正徳さん(59)=同及位=がそれぞれの田んぼで栽培を始めた。高橋さんは蔵に入ると絞りを担当し、伊藤さんは精米役だ。二人とも酒米の栽培にあたっては「絶対に他の品種は混ぜられない」と種もみの選別に注意し、栽培する田んぼも以前に植えた食米の「あきたこまち」の種が混ざってはいけないと1年間、休ませた。

  そして低農薬栽培に務め、手間をかけながら生育を見守った。それだけに高橋さん、伊藤さんも今回の県知事賞の受賞は自分の事のように喜ぶ。

  29日、高橋さんと伊藤さんは田んぼに立って「そろそろ稲刈りだな」と黄金色に実った稲を見つめた。管理が行き届いた田んぼには稗(ひえ)一本も見られない。しかし、今年は7月の長雨の影響もあって収量はやや落ちそうだと二人は話すが、「量より質だ」と実った稲を手にし、目を細めた。

  佐渡さんは「山田錦を超えたとは言えないが、それに匹敵する米になるとは思っていただけに、今回の評価は嬉しい」と話す。秋田酒こまちはタンパク質が少なく、粒も適度の大きさがあって、削りやすい。タンパク質の少なさが酒の味を左右するという。そして優れた味を求めるためには原料となる米をどれだけ削るかにも懸かってくる。

  吟醸酒は一粒から40%は削って米ぬかとし、大吟醸酒になると50%以上も削る。さらに今回のような品評会に出す酒となると60%以上も削ってしまうぜいたくさだ。その削った米ぬかは和菓子などの材料として使われるというが、日本酒の滑らかな味はこうしたぜいたくさから生れているのを今回の取材で知った。