車を運転できなかったら

生活の足を考える県主催のセミナー

大仙市で高齢者や障害者、タクシー業者らが意見交換(8月29日・水)

  「もしも車を運転できなかったら」をテーマに、これからの「生活の足」を考えようと県主催の移動サービス推進セミナー「みんなで考える秋田の生活交通」が28日、大仙市の仙北ふれあい文化センターで開かれた。

  県南各市町村の職員や福祉関係者、老人クラブ、そしてバス事業者やタクシー業者ら約110人が参加。セミナーでは車を運転できない交通弱者やいつかはマイカーを運転できなくなるかもしれないことを身近な問題として捉えようと秋田大学工学資源学部の木村一裕教授が「交通・移動サービスとまちづくり」と題して基調講演。

  木村教授は「誰かがやってくれるでは間に合わない。他人事でなく、当事者意識を持つべきだ」などと強調し、人口の少ない本県では地域活性化の視点から点と点を結ぶだけの交通ではなく、人々の活動を支え、それを支援する交通として考えようと提案。そして今後の公共交通は事業採算型、公共補助依存型、地域参加型のバス、タクシー業者が運行するデマンド(予約)型交通やNPOによる有償運送の3タイプを紹介。その上で住民参加型の運営はやっていて楽しい、他者のために働く使命感が必要などと語った。

  続いて県が県内の生活交通の現状や住民参加型の交通・移動サービスについて説明。県によると乗合バスの輸送人員はマイカーの普及によってピーク時の1969年度に比べ、現在は7分の1以下にまで落ち込み、バス路線の約8割は赤字路線となっているという。  このため事業者と行政を中心とした仕組みのままではこれからの社会に対応することは困難で、運行しているバスの便数の減少や路線の廃止も含め、地域の実情に即した効率的で利用しやすい生活交通を考えなければならないと訴えた。

  そして長野県中川村の村営巡回バスやNPO法人「ふるさとづくり・やらまいか有償運送」、社会福祉協議会が運行している福祉有償輸送をビデオで紹介。村営巡回バスは学生や一般の需要に対応し、やらまいか有償運送は村営バスでは対応できない地域や時間帯をカバーし、高齢者などを戸口から輸送、そして福祉有償輸送では障害者や要介護者の買い物の移動などに応じ、緊急時などには営業タクシーが需要に応えていると語った。

  県はこうした様々な移動手段を地域のニーズに合わせて組み合わせる〃適材適所〃と地域住民組織やNPOなどが主体となって自らつくりあげる「住民参加」がキーワードになると訴えた。

  シンポジウムでは老人クラブ代表や障害者団体代表、NPO法人代表、タクシー業者代表、そして大仙市職員ら8人がパネラーとなってディスカッション。老人クラブ代表からは「クラブ活動をやっていて突き当たるのは、足の問題だ。家族から送ってもらうのも可能だが、踊りの練習に行くのにタクシーを使ったり、家族に何度も頼むのは辛い」との訴えがあった。

  身障者代表も「障害者の求めるニーズは生まれたばかりの人、10代、20代の人でみな違う。若い障害者は普通の人と同じで映画にも行きたいし、デートや買い物もしたい。しかし、家族の支えはあってもデートしたいからとは口に出せないで諦めてしまう。今日の集まりでも参加したくても参加できず、我慢している障害者がいることを理解してほしい」と切実に語った。

  社会福祉関係代表からは「高齢になると運転も危なっかしいと免許を返上する人もいるが、その後のフォローがない。また、雪国であることのハンディも考えてもらいたい」と公共交通の必要性を求める声もあった。

  タクシー業者代表は高齢者の足の確保を狙いとした大仙市の「乗合タクシー」の試験運行について「3年間、冬期運行したが利用者が少なく、地域の人が本当に必要としているのか分からない」と苦言を示しながらも、「障害者の皆さんの移動がそれほど大変だということは知らなかった。我々、業界で手伝えることがあれば勉強したい」と協力を申し出た。

  一方、大仙市からは「地域交通」を考えるためのアンケート調査をした結果、回答者の8割近くはバスを利用してないという現状を示しながらも「それぞれ地域の実情に合った交通システムを望む声はある」と訴え、路線バスが廃止された場合、乗合タクシーの運行なども一つの手段として業者と相談したいと報告していた。