初冬を告げる初絞り
26日から「新米初しぼり」全国販売へ(11月17日・土)
東北清酒鑑評会の純米酒の部で「首席」に輝いた大仙市南外字悪戸野の「出羽鶴酒造」(伊藤辰郎社長)で17日朝、初冬を告げる新酒の初絞りが行われた。この日絞り出された酒は26日から出羽鶴純米新酒「新米初しぼり」として北海道から九州まで、全国で販売される。絞り場で槽(ふね)と呼ばれる容器から流れ出した酒を茶わんで受け止めた製造部長の佐渡高智さん(45)=南外薬師堂=、杜氏の佐藤賢孔さん(57)=同及位=は「11月に入っても気温が高い日々が続いて温度管理に気遣ったが、香りも良く、キチッとしたうま味がある酒となった」とホッとした表情を浮かべた。蔵の玄関先に一番仕込みの「酒」ができ上がったのを知らせる緑の「杉玉(酒林)」もつり下げられ、酒造りシーズンの到来が告げられた。
日本酒は秋の冷え込みを待って蔵人(くらびと)が蔵に入り出し、仕込みを始める。今年は10月15日から杜氏の佐藤さんをはじめ、頭(かしら)、麹(こうじ)師、もと師(酒母)、精米師、蒸し番、槽長(ふなちょう)と呼ばれる職人7人と助手4人の11人が蔵に入った。そして麹と蒸した米に酵母菌を混ぜた「酒母」を一緒にした「もろみ」をタンクに入れ、29日からこの日まで20日間かけて櫂棒(かいぼう)でかき混ぜ作業を行い、発酵させた。
初絞り用の米は秋田県産の酒造好適米「美山錦」を使った。酒米と言えば兵庫県を主産地とする「山田錦」が主流だが、同社では地元で採れた米で酒を造りたいとこだわり、今回の清酒鑑評会でも純米酒の部での原料米は県産の「秋田酒こまち」を使って初の首席に輝いた。
酒造りは霜が降り、気温が低いほど発酵管理もしやすいが、今年は11月になっても暖かい日々が続き、冷却機を使って室温を下げたり、仕込み水を冷やすなど細かい気配りもした。佐藤さんは蔵に泊まり込み、酒の発酵を子が育つような思いで見守った。
巨大なタンクの中で発酵させた「もろみ」は麹の粒が混じって白く濁っている。それを酒袋に詰め、絞り出すと原酒が生まれる。タンクからパイプラインで送られた「もろみ」を2人の蔵人が絞り場で次々と酒袋に詰め、槽に寝かせるように積み重ねる。重みで絞られた新酒がチョロチョロと産声を挙げて槽底の管から流れ出す。それを見つめ、手であおぐようにして香りを確かめ、味を確認する杜氏の佐藤さんと製造部長の佐渡さんの眼は厳しい。ひと口含んだ2人から「ウン。シッカリした味が乗っている」と満足そうな声が漏れた。
そして酒造り現場の責任者として直径60センチもある「杉玉」をつり下げた佐藤さんは「前は吹雪の中でこうした作業をやったこともあるが、地球温暖化のせいか年々、気温が高くなっているのが気になります」と話した。初絞りを終えた後は1週間かけて澱(おり)を沈殿させた上でろ過させ、商品化する。そして雪を迎えるこれからが本格的な酒の仕込みとなり、来年3月初旬まで純米酒や吟醸酒など出羽鶴ブランドが次々と蔵から誕生する。
初絞りの酒は「縁起物」として〃元旦〃に飲みたいと待っているファンも多い。販売するのは1.8リットル換算で2000本。「秋田清酒株式会社」で瓶詰めし、26日から全国の酒販売店に向けて出荷される。絞りたて風味を残すためアルコール度数は少し高めの16度から17度。1.8リットル詰めは税込みで2310円、720ミリリットル詰めで同1050円。出羽鶴の蔵の話題や商品情報は下記ホームページから。