日本一周、笑顔増やしの旅

路上詩人・牛飼さん大仙市へ

詩作を糧に鹿児島から北海道、そして秋田へ(9月19日・水)

  250ccのオートバイを旅の足に寝袋と筆を持ち、全国各地で「笑顔になれる言葉」を色紙に書きながら「日本一周、笑顔増やしの旅」をしている〃路上詩人〃が18日、大仙市のJR大曲駅前に立ち寄った。「できるだけ多くの人に僕のことを知ってもらい、たくさんの笑顔に会うため力を貸して下さい」とメールを通じて本紙に取材の申し入れがあったもの。この詩人は鹿児島市姶良町(あいらちょう)の牛飼勇太さん(25)。4月20日に自宅を出発し、公園で野宿をしたりインターネットカフェやカプセルホテルに泊まりながら九州、中国、四国地方を回り、和歌山県から太平洋側を北上。北海道の旅を終えて、今月10日に青森を回って、14日に秋田市に入った。

  主に県庁所在地の都市を舞台に路上に座って作品を書いた色紙を並べ、人が集まってくるのを待つ。牛飼さんがPR用に書いた詩には父の俊郎さん=52歳で病死=、母の良子さん(53)宛てに書いた「二人が笑えばみんなが笑う。だから笑って歩いてゆこう。二人の笑顔は最幸(さいこう)だから、みんなの笑顔の素となる」もある。

  10数本の筆を遣って描く牛飼さんの書は、独特な流れがあり、「字」そのものが笑っているように見える。見てると不思議なほど心が和む。小学1年から6年まで書道を学んだという。
  路上に並べたその色紙に目を止め、欲しいという人が現れたらその人の名前を尋ね、その人に合った詩を即興で書き上げ、旅の資金としてきた。「値段は買う人に決めてもらってます」と牛飼さん。100円もあれば、1000円、時には1万円もはずんでくれる人もいるという。中には「縁起が良い。壁に大きく書いてくれ」と頼む酒場もあるという。秋田市でも駅前の定食屋さんの壁に「食楽(くら)と書いて喜ばれました」と話した。

  客が付ける値段は主に1000円が多いが、礼を述べる牛飼さんの言葉もいい。「このお金は次の笑顔のために遣わせてもらいます」。こうして旅から旅への旅費を稼ぎ、14日から18日朝まで秋田市で過ごした。

  牛飼さんは専門学校を卒業後、大阪で美容師をしながら独学で詩作をしていたが、今年1月に母が住んでいる姶良町に里帰りした。そして近くの鹿児島市にある天文館で毎日午後6時ごろから深夜まで路上に座って、その時々に浮かんだ詩を色紙に書いて販売してきた。だが、最近耳にするのは余りに暗いニュースが多く、人々の笑顔が少なくなったと牛飼さん。

  亡くなった父も「人に喜ばれることをしたいと笑顔を大事にする人だった。大きなことはできないが、目の前にいる人を笑顔にすることはできる。一つでも多くの笑顔に会えるよう『笑顔になれる言葉』を書いて歩こう」と日本一周の旅を決意した。

  これまで2500人以上の人に詩を書いてきたという。18日午前10時、駅前で会った牛飼さんは背中に寝袋などの入った大きなバッグを2つも背負い、オートバイにまたがってやって来た。着ているのはオレンジ色のつなぎ。その色にしたのは「覚えてもらいたいのと、温かい色で日本全国を笑顔で結びたいから」と牛飼さん。つなぎの背中には「書人(かきんちゅ)」の文字も描かれている。「かきんちゅ」は沖縄の方言だという。

  寝袋のほかに色紙や書道具などを入れた荷物は背負うと40キロはあるという。身長168キロ、体重54キロの体にはきつそうだが、「もう慣れましたから」と牛飼さんは平ちゃらな笑顔を見せた。

  牛飼さんが両親のために書いた詩駅前で立ち話の取材も気の毒と中通町の画廊喫茶「Blanca(ブランカ)」に案内した。「花火通商店街」のアーチを見て「ここがあの有名な花火の街ですか」と牛飼さんは目を輝かせ、「一度、花火大会に来て見たいと思ってたんですよ」と感動の声。「これから山形県、そして新潟、長野、富山を走って10月21日の誕生日までに生まれ育った大阪にゴールする予定です」とも話した。旅を終えたらこれまでの日記や旅の間に創作した詩をまとめ「笑って生きる」を本にしたいと夢も語った。

  この日は店開きする予定はなかったという牛飼さんだが、話を聞いていたBlancaのオーナー三浦尚子さんが「私にも書いて」と注文。「笑顔を創る。喜びで笑顔にする。そんな生き方をしたい」とリズム感のある筆遣いで色紙を残した。

  秋田県南日々新聞はインターネットカフェで知ったという。そしてそのカフェから取材要請のメールを本紙に送り、17日夕、携帯電話を通じて確認の連絡があった。取材中、牛飼さんの携帯電話が鳴った。鹿児島の母からだという。ニュースを見て「秋田が大雨で大変なようだけど大丈夫なのか」と心配の電話だったと牛飼さん。

  珍しい姓はペンネームでもなく本名だという。「牛飼座」のペンネームも持っている。牛飼さんは大阪にゴール後はフェリーで鹿児島に帰る。その日までの日記は下記のブログで楽しめる。本紙の読者がどこかで牛飼さんの姿を見かけたらどうぞ笑顔をもらってやって下さい。

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