「ヒメちゃん」、「ガンバリルおじさんとホオちゃん」
児童文学界のトップ、荒井さんとやなせたかしさん作・絵(2月28日・木)
大手出版社「小学館」(本社・東京都千代田区)の「おひさまのほん」シリーズとして児童文学界のノーベル賞と称される「リンドグレーン賞」受賞作家・荒井良二さんの「ヒメちゃん」とアンパンマン生みの親・やなせたかしさんの「ガンバリルおじさんとホオちゃん」の2冊の絵本が出版された。
ヒメちゃんは黄色い帽子に白い洋服と紺色のスカートが似合う女の子。そのヒメちゃんは「宝物」を探しに旅に出る。しかし、歩いているうちに自分の探している「宝物」がどんなものだったか忘れてしまう。だからヒメちゃんは「たからものーでてきてえー」と言いながら歩く。「でてきてえー」と何度も言ったら、夜でもないのにおばけが「すー」と出てきたのでヒメちゃんは「わたしの たからものは なんだか わかりますか?」と聞いてみる。おばけは「それは おいしいものですか?」と尋ね、ヒメちゃんは「たぶん」と自信のない声で答えるとおばけは「たからものは……ケーキ!」とニッコリし、ドーンと目の前に大きなケーキを出す。
ヒメちゃんはそのケーキに目をキラキラさせるが「ちょっと違うと思うんだけど」とおばけをガッカリさせる。そして次の旅先の街ではきれいに輝くボールたちがヒメちゃんのためにキラキラと輝く大きな「宝石」を出してくれる。ヒメちゃんはその宝石を目の前にしても考えこんで、「ちょっと違うと思うんだけど」と答え、ボールたちはツンとして行ってしまう。
そのヒメちゃんのことが心配でたまらないボーイフレンドのオージ君もやってきて一緒に宝物探しを始めるが……。ヒメちゃんの探している大切な「宝物」って何だろう?。
荒井さんの絵本はストーリーだけでなく絵が心をいやす。そして絵本を手にした子どもたちのハートをいかにつかむかと見開きのページを使って主題をビックリするほど大きく強調し、楽しませる。ヒメちゃんがその日、その日の出来事を絵日記にしてまとめるのも興味を引く。「オージくんはヒメちゃんのだいファンなんだよ、フフフ。ヒメちゃんがたからものなんだって!おかしいね!」。絵日記は本当にヒメちゃんが描いたと思わせるような文字の拙さで、その文字の幼さが子どもたちの心にしみ込み、共感を呼びそうだ。
荒井さんは1956年、山形県生まれ。日本大学芸術学部卒。1997年に「小学館児童出版文化賞」、1999年にはボローニヤ国際児童図書展特別賞、2000年に講談社出版文化絵本賞、そして05年には児童文学界のノーベル賞とも言われている「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を受賞するなど日本を代表する絵本作家の一人。
やなせさんの「ガンバリルおじさんとホオちゃん」は、あのアンパンマンを生み出した絵本作家ならではのほほえましさと優しさで感動を与える。まゆ毛もひげも真っ白で、ピンク色の帽子とベストが似合うガンバリルおじさん。
そのおじさんは「ガンバリルやまのてっぺんのいっけんやに、たったひとりで がんばって すんで います」とやなせさんは語る。着ている洋服も家もボロボロだ。でもガンバリルおじさんは何ていい笑顔をしているのだろう。だからおじさんの所にはクマちゃんもサルさんも、タヌキさんも、ウサギさん、そして小鳥たちもたくさん寄ってくる。
ある日、おじさんは庭に「木」を植えたいと思い付き、山道を登る。しかし、山の天気は変わりやすく、ひどい嵐になっておじさんは真っ暗な谷底に落ちてしまう。そのおじさんを助けたのが「ホオちゃん」という不思議な女の子。頭に白い花を付けたホオちゃんが敷いてくれた葉っぱの寝床で眠り、ホオちゃんのつくったお餅を食べて元気を取り戻したガンバリルおじさんは「たすかって よかった。また がんばれる ガンバリル。ホオちゃん ありがとう!」と笑顔でガンバリルやまへと帰る。
それから何日か過ぎてガンバリルおじさんは、ホオちゃんにお礼を言いたいと山を登ってホオちゃんの家を訪ねる。しかし、いくら探してもホオちゃんもホオちゃんの家も見つからない。途方にくれたおじさんを小鳥たちが案内する。ガンバリルおじさんが小鳥たちの案内で見たものは……。
やなせさんは温かい色彩感覚で絵を描き、ねずみ君、ウサギ君、サルさん、そして小鳥たちを踊らせる。小高い丘の上での楽しいガンバリルダンスを動物たちと楽しむガンバリルおじさん。それを照らす真っ赤な夕日。やなせさんの絵のメルヘンさはきっと大人にも安らぎと感動を与えるだろう。
やなせさんは1919年、高知県香美市香北町朴ノ木(ほおのき)生まれ。三越宣伝部にデザイナーとして勤務後、53年にフリーに。1972年、月刊「詩とメルヘン」を創刊し、同誌編集長を務める。73年フレーベル館の月刊絵本「キンダーブック」に「あんぱんまん」を掲載。以後、アンパンマンシリーズをはじめとする愛情あふれる絵本を出版している。
「ヒメちゃん」も「ガンバリルおじさんとホオちゃん」も「絵本ていいな……」と夢の世界へと誘う。親子で楽しめる素敵な絵の世界だ。どちらもAB判32ページ。税込みで1365円。28日から全国の書店で販売されている。