師走に入って秋田に2度目の霜が降りた朝、秋田の空は抜けるような青空が広がった。初冬の田沢湖は風もなくまるで鏡のように「駒ヶ岳」を湖面に映していた。雪化粧したこの美しい駒ヶ岳の姿を何と例えよう。言葉を失う。駒の美しい姿を観ているといつも思い出すのは高村光太郎と智恵子の悲しみだ。「半ば狂へる妻は草をしいて坐し わたしの手に重くもたれて 泣きやまぬ童女のやうに慟哭する・・・わたしもうぢき駄目になる」(山麓の二人より)。精神に変調を来し、自殺さえ図った妻。慟哭したかったのは、泣きたかったのは、光太郎だったろう。湖面に映った秋田駒の雄姿を観ながら、光太郎と智恵子の悲しみを想った。