──さん。昨夕の東山は朝の雨で空気が洗われたせいか山肌がとても立体的に浮き上がって見えました。山肌の色は藍染めされたような神秘的な濃紺。柴犬のアキを連れ、それからパピーを連れ、その東山を眺めながら横手川の堤防を歩きました。
──さん。高村光太郎が晩年に送った山荘へはこの道を真っ直ぐに進み、右へ曲がると見えてきます。道の左手の田んぼはインクで染めたようなつゆ草が風にささやき、右手はご覧のような鬱蒼とした森。光太郎は晩年、この静かな山間(やまあい)の生活を求めたのです。この静かな山の中での生活なら智恵子と二人きりで向き合えると。
──さん。横手川の堤防から見える東山は、光太郎の「案内」と言う詩に登場する「奥羽国境山脈」です。今までは想ったこともないのですが、光太郎が晩年に過ごした花巻市とこちら大曲市とは山一つ隔てただけだったのですね。朝霧が立ち込める季節となりました。高村山荘を目指す若い人たちの後ろ姿が今朝はとても鮮明に思い出されました。