羽後町は旧田代村の地主・長谷山家の邸宅を観たいと車を走らせたのは雨の日だった。梅雨特有の細かい雨が朝からしのついていた。七曲峠を初めて走った。本当に曲がりくねった峠道だった。頂上近くの見晴台に車を止めたら雲が切れ、雄勝平野が一望に見渡せた。インクを溶かしたような遠くの山々。そして緑の田んぼ。黒い森。眺めのいい峠道を楽しみ長谷山邸を目指した。曲屋の母屋、渡り廊下で続く土蔵の上に築いた三階建ての高楼。往時は使用人も含め30人が暮らしたという。案内の人は「昔は毎日のようにこの高楼座敷でお客さんたちと宴会をやったものです」と説明した。明治文学に登場しそうな長谷山邸の雰囲気だった。読者の皆様もいつかはどうぞ。