「『おや、月見草』。そう言って、細い指でもって、路傍の一カ所をゆびさした。……なんと言ふのか、金剛力草とでも言いたいくらい、けなげにすっくと立っていたあの月見草は、よかった。富士には、月見草がよく似合う」と書いたのは太宰治だった。朝の散歩道、遠くに霞むように東山が静かに横たわっている。月見草が確かに健気にすっくと立って咲いていた。「あら。月見草」と妻は叫んだ。その月見草も良かった。東山にも月見草が良く似合っていると思った。