夕方のいつもの散歩コースである横手川の堤防斜面が野菊の花で一面に覆われていた。白衣のような清潔さと可憐さが花にはあった。遠い昔、恋することに憧れて何度も読んだ伊藤左千夫の「野菊の墓」が思い出された。「民さんはそんなに野菊が好き……道理でどうやら民さんは野菊のような人だ」。15歳と17歳。若い二人の淡い恋の話が浮かんだ。秋に咲く野菊には強さと優しさ、そしてどこかに悲しみが秘められているように感じた。